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医療・介護施設でのAI活用|書類・連絡・記録業務を効率化する

医療クリニックや介護施設では、診療・ケアといった専門業務の合間に、大量の書類作成・記録・連絡業務が発生します。患者や利用者家族への案内文、業務マニュアル、行政向けの書類のひな型——これらは専門的な判断が必要なわけではなく、「正確に・一定の形式で書く」ことが求められる作業です。AIはこうした「書く・整える・まとめる」業務を得意としており、医療・介護の現場でも活用の余地は十分あります。この記事では、具体的な活用場面と導入時の注意点を整理します。

書類・記録業務での活用

医療・介護施設での事務作業のうち、AIが担いやすい業務の例を挙げます。

患者・利用者への案内文の作成

  • 初診・初回利用時の手続きや持ち物案内の文面
  • 感染症対策・院内ルールの掲示文の改訂
  • 定期連絡や注意事項を伝えるお知らせ文の下書き

「毎回似た内容を少し変えて書いている」ような案内文は、AIに下書きを作ってもらい、担当者が確認・修正する流れに切り替えやすい業務です。

具体的な時間削減の目安

内科クリニック(スタッフ10名規模)の例では、初診案内・持ち物リスト・感染症対策ルールといった定型案内を、医療事務担当が1件あたり平均25〜30分かけて作成していました。AIを使って下書きを生成し、担当者が5〜10分確認・修正する流れに変えたところ、案内文1件あたりの作業時間が約75%削減されました。月に10件程度の案内文改訂があるとすると、月4〜5時間の事務作業が浮く計算になります。

AIへの指示の出し方(例)

案内文をAIに作らせるときは、以下のような情報をセットで渡すと品質が安定します。

  1. 読み手(初診患者/ご家族/新規入居者など)
  2. 伝えたい項目を箇条書きで列挙(受付時間・持参書類・駐車場の有無など)
  3. 文章のトーン(やさしい口語体 / 丁寧な敬体 など)
  4. 分量の目安(A4半ページ程度、など)

「長く書きすぎず、箇条書きを活用して読みやすく」と一言添えるだけで、患者が実際に読みやすい文面が出やすくなります。

業務マニュアル・手順書の整備

  • スタッフが口頭で伝えてきた手順をテキスト化する
  • 既存マニュアルの内容をわかりやすく書き直す
  • 新人向けの業務案内のたたき台を作る

属人化が生まれやすい現場ほど、マニュアル整備の効果は大きくなります。

なぜ医療・介護現場でマニュアル整備が後回しになるのか

診療・介護の現場は「今すぐ目の前の人を助ける」ことが最優先です。マニュアルを作る時間は後回しになりがちで、多くの手順が「教えてもらった通りにやっている」状態で蓄積されます。その結果、担当者が異動・退職した瞬間に業務が止まったり、新人教育に余分な時間がかかったりします。

AIを使えば「口頭でざっくり説明する→AIが整理して文章化→担当者が確認・修正」という流れで、数時間かかっていた手順書が30〜40分でたたき台になります。完璧なマニュアルを一気に作ろうとせず、まず「1業務1ページ」を目標に着手するのが続くコツです。

手順書作成の流れ(ステップ例)

  1. 担当スタッフに「この業務の手順を箇条書きで話してください」と聞きながら、メモやボイスメモに起こす
  2. そのメモをそのままAIに貼り付け、「新人スタッフ向けの手順書に整形してください。見出しと番号付きリストを使ってください」と指示する
  3. 出てきた文章を担当者が読み、抜け・誤りを修正する
  4. 共有ドライブやチャットツールにアップして運用開始

ベテランスタッフの頭の中にある暗黙知を、AIが「引き出す補助役」として機能するイメージです。

記録・日報・報告書の下書き

記録の種類AIが担える部分
日報・業務記録箇条書きのメモをまとめて文章化
引き継ぎメモ要点を整理して読みやすく成形
行政への定型報告書基本フォーマットの下書き作成
研修報告・会議録議事メモをもとにした要約

AI出力は必ず担当者が確認・修正してから使用します。記録の最終確認は人が責任を持って行います。

介護現場での活用例:引き継ぎメモの効率化

10名規模のグループホームでは、夜勤から日勤への引き継ぎメモに1件あたり15〜20分かかっていました。夜勤担当が「●さん、夜間2時に目覚め、トイレ介助。水分摂取少なめ。朝食は完食。」のような短いメモを残し、日勤開始前にAIで文体を整えて引き継ぎシートに転記する運用に変えたところ、作業時間が約10分に短縮。夜勤明けのスタッフの負担が減り、引き継ぎ内容の読みやすさも向上しました。

行政報告書への応用と限界

介護保険関連の加算算定書類や実績報告書は、フォーマットが固定されているものが多く、記載項目と実績数値さえそろっていればAIが下書きを作りやすいです。ただし、法令・加算要件に関わる記述は必ず施設長や事務担当が内容を確認する必要があります。AIは「書式を整える」ことはできますが、「加算の可否を判断する」ことはできません。使う範囲を「文章を整える工程のみ」に限定して運用します。

連絡・問い合わせ対応での活用

施設への問い合わせや、家族との連絡でも、AIは文章を作る部分を補助できます。

  • 利用者家族への定期連絡文の下書き
  • 面会・見学の案内メールの作成
  • 問い合わせへの回答文のたたき台作成

とくに「同じような質問が繰り返される」場合は、よくある質問と回答のセット(FAQ)をAIでまとめておくと、対応が素早くなります。AI活用の一般的な情報や社会的背景については、AIと社会課題への取り組みを発信するAIWAYのメディアも参考になります。

家族連絡文の品質を保ちながら効率化する方法

家族への連絡文は「丁寧すぎる」も「素っ気なさすぎる」も問題になりやすい文章です。AIに下書きを作らせるときは、次のポイントを指示に入れると調整しやすくなります。

  • 「ご家族を安心させる、温かみのある文体で」
  • 「事実の報告と今後の対応方針をセットで書く」
  • 「1段落3〜4行程度、全体200字以内」

初稿の段階でほぼ使えるものが出てくることが多く、担当者が固有名詞や日付・具体的な状況を補足すれば完成します。「毎回ゼロから書く」から「毎回修正だけする」に変わるだけで、1通あたり10〜15分かかっていた文書作成が3〜5分に縮まります。

FAQの整備で問い合わせ対応を省力化する

見学・入居・料金・行事参加に関する問い合わせは、どの施設でも質問の内容が似通ってきます。よくある質問30〜40件を箇条書きでAIに渡し、「施設スタッフが電話対応で読み上げやすいQ&A形式にまとめてください」と指示するだけで、対応マニュアルの原型が作れます。

完成したFAQを受付・事務スタッフが手元に置けば、問い合わせ電話の平均対応時間が短縮され、新人スタッフでも安定した説明ができるようになります。

医療・介護現場ならではの注意点

AI活用にあたり、特に気をつけたい点があります。

個人情報・患者情報の取り扱い

患者名・病歴・診断内容・利用者の個人情報は、外部のAIサービスに入力してはなりません。AIに渡すのは「構成・文体・表現を参考にする」目的に限定し、具体的な個人情報を含めない形で使います。

なぜ外部AIサービスへの入力が問題なのか

一般向けのAIチャットサービス(無料プランや企業向けプランを問わず)は、入力したテキストがサービス提供者のサーバーに送信される仕組みになっています。個人情報保護法・医療・介護関連の法令のもとでは、患者・利用者の情報を事前の同意なく第三者のサーバーに送ることは問題になり得ます。

実務での対応ルール(例)

  • AIには「架空の状況」または「個人を特定できない形」でのみ入力する(例:「Aさんが〇〇」→「ご利用者様が〇〇」など置き換えてから入力)
  • 施設として利用を認めるAIツールを1〜2種類に絞り、スタッフ全員に周知する
  • 「AIに入力してよい情報・してはいけない情報」を1枚の掲示やメモにまとめ、作業場所に貼る

これだけで、スタッフが迷う場面を大幅に減らせます。個人情報の取り扱い方針を書面化しておくことは、万が一トラブルが起きたときの施設側の説明責任を果たすためにも重要です。

AI出力の最終確認は必ず人が行う

医療・介護の現場では、案内文や記録の正確さが直接信頼に関わります。AIの出力は「下書き」と位置づけ、内容の正確さ・適切さの判断は必ず担当者が行います。

よくある失敗パターンと対策

AIが生成した文章でよく起きる問題を知っておくと、確認のポイントが明確になります。

  • 事実の誤り:AIは存在しない制度名や誤った数値を自信を持って書くことがあります。特に診療報酬・介護報酬・加算に関する記述は、必ず現行の基準と照合してください。
  • 過度に丁寧な表現:「〜していただければ幸いでございます」のような過剰敬語が出ることがあります。施設のトーンに合わせて調整します。
  • 抜け漏れ:「〇〇を書いて」という指示で想定と違う項目が省かれることがあります。確認チェックリストを1枚作っておくと見落としが防げます。

確認の工数を最小化する方法

確認を「ゼロ」にすることはできませんが、確認コストを下げる工夫はできます。担当者が事前に「よく使うプロンプト(AI指示文)のテンプレート」を3〜5種類作っておくと、毎回の出力品質が安定し、修正箇所が少なくなります。使い続ける中で「このプロンプトだと抜けが出る」と気づいたら、テンプレートを更新していきます。

使用範囲を明確にする

「どの業務でAIを使ってよいか」を事前に決め、スタッフ全員が共有できる状態にしておきます。使用が認められている業務の種類と注意事項を、一枚の社内メモにまとめておくだけで十分です。

導入初期に決めておくとよい3点

  1. 使ってよい業務の一覧(案内文の下書き・マニュアルのたたき台・会議録の要約、など)
  2. 使ってはいけない情報の例示(患者氏名・診断名・利用者情報・スタッフ個人情報、など)
  3. AIを使った成果物の承認フロー(誰が確認して、どのフォルダに保存するか)

最初から厳密なルールを作る必要はありません。「まずこの3業務だけ試す」と絞って始め、問題なければ範囲を広げていくほうが現場の混乱が少なくなります。

よくある質問

Q. AIに書かせた案内文を施設の公式文書として使ってよいですか?

A. 担当者が内容を確認・修正したうえで承認すれば問題ありません。AIはあくまでも下書きを作るツールです。文書の正確さと責任は、最終確認をした担当者・施設に帰属します。「AIが書いたから施設は責任を負わない」とはならない点を、スタッフ間で共有しておくことが大切です。

Q. 無料のAIチャットサービスと有料プランで、個人情報の取り扱いは変わりますか?

A. プランによって利用規約・データの扱いが異なります。一般的に、企業向け有料プランはユーザーの入力をAIの学習に使わない設定が選べるものが多いですが、それでも入力データはサーバーに送信されます。患者・利用者の個人情報は、どのプランでも入力しないことを原則とするのが安全です。

Q. スタッフがAIを「間違って使い始める」前に、施設として何を用意すればよいですか?

A. 最低限、「使ってよい業務」と「入力してはいけない情報」を1枚の紙かデジタルメモで示すだけで十分です。初期段階では複雑なルールより「シンプルで守りやすいガイドライン」のほうが効果的です。半年後に実態を確認して必要であれば補足する、という段階的なアプローチをお勧めします。

まとめ

医療・介護施設でのAI活用は、患者や利用者への案内文、業務マニュアル、報告書・記録の下書きなど、「正確に・一定の形式で書く」業務から始めるのが効果的です。個人情報の管理と最終確認は必ず人が担いながら、「書く」工程だけをAIに任せる使い方が現実的かつ安全です。AIWAY Groupは、医療・介護施設を含む様々な現場での業務AI活用を、FLEXを通じて支援しています。

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